商標がよくわかる!初心者用FAQ講座

このセクションでは、商標の制度の概略について、知的財産権になじみのうすい方でも容易に理解できるようにFAQの形で簡単に説明しました。



Q1:商標とはどのようなものでしょうか?

 商標とは、事業者が自己の取り扱う商品・役務(サービス)を他人の商品・役務と区別するために、その商品・役務について使用するマーク(標識)をいいます。
 事業者が円滑な経済活動を行っていくためには、取引者・需要者がある商品や役務に接したとき、その商品や役務は誰が製造または提供したものなのか、その商品や役務の質としてはどのくらいのものが期待されるのか、といった事柄がわかる制度が必要です。
 そこで、商標制度は、商品や役務に付される識別標識である商標を保護することを定めて、その商標が付された商品や役務の出所を表示する機能、品質を保証する機能及び広告機能により、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達に寄与し、一方で需要者の利益を保護しようというものです。


Q2:商標はどのような種類のものがあるでしょうか?

 我が国において保護を受けることができる商標は、次に掲げるような構成からなるものでなければなりません。
 ①文字商標
 文字のみからなる商標のことをいいます。文字はカタカナ、ひらがな、漢字、ローマ字、外国語、数字等によって表されます。その文字商標が、特定の意味を有するか否かは問いません。但し、我が国の消費者が一般に文字と理解できないものは、図形商標とされる場合があります。
 ②図形商標
 写実的なものから図案化したもの、幾何学的模様等の図形のみから構成される商標をいいます。又、図形同士を結合した商標もあります。文字商標も図案化されたものは、図形商標とされる場合があります。
 ③記号商標
 暖簾(のれん)記号、文字を図案化し組み合わせた(モノグラム化した)記号、記号的な紋章のことをいいます。
 ④立体商標
 立体的形状からなる商標をいいます。例えば、実在又は架空の人物、動物等を人形のように立体化したものなどです。
 ⑤結合商標
 文字、図形、記号、立体的形状の二つ以上が結合した商標をいいます。
 ⑥上記①~⑤に掲げるものと色彩が結合した商標
 ⑦動き商標
 文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標のことをいいます。
 ⑧ホログラム商標
 文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標のことをいいます
 ⑨色彩のみからなる商標
 単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標のことをいいます
 ⑩音商標
 音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標のことをいいます
 ⑪位置商標
 文字や図形等を商品等に付す位置が特定される商標のことをいいます


Q3:商標の出願にはどのようなものがあるでしょうか?

 (1)商標登録出願
商標登録出願は、出願人の業務に掛かる商品または役務(サービス)に使用をする商標を登録するための出願です。

 (2)団体商標登録出願
団体商標登録出願は、事業者を構成員に有する団体が、その構成員に使用をさせる商標を登録するための出願です。
したがって、商品または役務に団体商標を使用したときは、その団体における構成員の業務に係るものであることを表すことになります。

 (3)地域団体商標登録出願
地域ブランドの適切な保護のため、平成18年4月1日から地域団体商標が導入されました。具体的には、地域団体商標の登録に際して、主体が要件に適合しているか(事業協同組合、農業協同組合、商工会、商工会議所、特定非営利活動法人等)、周知性の要件を満たしているか(商標が使用された結果、出願人の業務に掛かる商品または役務を表示するものとして一定範囲の需要者に認識されるに至ったか)、商標中に用いられる地域名と商品または役務が密接な関連性を有しているか(商標中の地名が商品の産地、主要な原材料の産地等であるか)といった点について審査が行われます。

 対象となる商標は、①:地域名と商品または役務の普通名称からなる商標、②:地域名と商品または役務の慣用名称からなる商標、③:①または②に商品の産地・役務の提供の場所を表示する際に付される慣用文字が加えられた商標です。

 (4)防護標章登録出願
防護商標登録出願は、登録商標を使用した結果著名なものとなったことによって出所の混同を生じさせるおそれのある分野の商品または役務について、他人の当該登録商標の無断使用を排除するための出願です。したがって、防護標章登録は商品または役務に使用することを前提とした権利ではありません。


Q4:商標の審査はどのように行われますか?

 商標出願は、主に以下の要件について審査し、拒絶する理由が発見されない場合に商標登録されます。

 ①自己の商品・サービスと他人の商品・サービスとを識別することができないもの。具体的には、商品・サービスの普通名称、慣用されている商標、商品の販売地・用途、サービスの質・提供場所等。
(拒絶されてしまう例)
 ・商品「レタス」について「サニーレタス」(普通名称)
 ・商品「清酒」について「正宗」(慣用商標)
 ・サービス「飲食物の提供」について「中華料理」(サービスの質)
 ・「鈴木」、「YAMADA」(ありふれた氏又は名称)
 ・仮名文字の1字、ありふれた輪郭(「○」、「△」、「□」等)(極めて簡単で、かつありふれた商標のみからなる商標)

 ②公益上の理由から登録を受けることができないもの
 例1:国旗と同一または類似の商標


 例2:外国、国際機関の紋章、標章等であって経済産業大臣が指定するもの


 例3:公序良俗を害するおそれがある商標
 例えば、構成自体がきょう激、卑わいな商標、特定の国や国民を侮辱する商標その他の国際信義に反する商標、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような商標など
 例4:商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれのある商標
 (例)商品「ビール」について「○○ウイスキー」の商標
 サービス「自動車による輸送」について「○○空輸」の商標

 ③私益保護の見地から登録を受けることができないもの
 例1:他人の登録商標と同一または類似の商標であって、同一又は類似の商標・役務に使用するもの
  ※商標の類否判断は称呼(呼び方)・外観(外形)・観念(意味合い)のそれぞれの要素を総合的に勘案して行われます。
 例2:他人の業務にかかる商品・サービスと混同を生ずるおそれがある商標
 例3:他人の氏名、名称又は著名な芸名、略称等を含む商標
 (例) 国家元首の写真やイラスト、著名な芸能人、スポーツ選手等(本人の承諾を得ている場合を除く。


Q5:商標を登録すればどのようなメリットがありますか?

 商標登録すると、全国的に効力が及ぶ商標権が付与されます。 商標権は、指定商品(役務)についての登録商標を独占的に使用する権利(使用権)であるとともに、他人が指定商品(役務)と類似する商品(役務)について使用を排除することができる権利(禁止権)です。第三者が無断で登録商標と同一または類似する商標を、指定商品・役務と同一または類似する商品・役務に使用すると商標権の侵害となりますが、登録商標、指定商品・役務のうち一方が非類似の場合は、権利侵害にあたりません。
商標権者は、侵害者に対して侵害行為の差し止め、損害賠償等を請求することができます。 なお、商標権の存続期間(権利期間)は原則として10年ですが、更新することにより半永久的に保有することができます。



Q6:商標の更新について教えてください。

 商標は、事業者の営業活動によって蓄積された信用を保護することが目的であることから、その商標の使用が続く限り、商標権を存続させる必要があります。
 そこで、商標の場合は、更新登録の申請によって10年の存続期間を何回でも更新することができます。


Q7:登録されている商標を調べることができますか?

 他人の登録商標と同一又は類似する商標であって、同一又は類似の商品・役務について使用をするものは商標登録を受けることができません(Q4参照)。また、他人の登録商標と同一または類似する商標を、指定商品・役務と同一または類似する商品・役務に使用することは商標権の侵害となります(Q5参照)。  
 そこで、既に出願・登録されている商標を調べることが重要となってきますが、調査の方法としては、以下のものがあります。
(1)特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の商標 検索サービスによる調査
  ①商標出願・登録情報(文字列等による検索。前方一致、中間一致、後方一致検索が可能。)
  ②称呼検索(商標から生ずる「読み」により、同一又は類似の読みを生ずる商標を検索。)
  ③図形商標検索(商標構成中の図形要素毎に付与されたウィーン図形分類リストによる検索。)
(2)商標公報による調査
  ①商標公報
  ②国際商標公報
  ③公開商標公報
  ④公開国際商標公報
(3)TMview


Q8:商標の出願をしてから登録までの手続きはどのように行われますか?

 商標登録出願から登録までの手続きの概要について教えて下さい。
(1) 出願
 商標権を取得するためには、①出願人、②商標登録を受けようとする商標、③商品・役務の区分、④指定商品・役務を記載した願書及び必要な書面を添付して特許庁に提出する必要があります。一つの商標登録出願では、複数区分に属する商品・役務を指定することができますが、一つの商標登録出願では一つの商標しか出願することができません。
(2) 出願公開
 商標登録出願があったときは、出願の内容が公開商標公報で公開されます。
(3) 方式審査
 特許庁に提出された出願書類は、所定の書式通りであるかどうかのチェックを受けます。 書類が整っていない、必要項目が記載されていない等の場合は、補正命令が発せられます。
(4) 実体審査
 特許庁の審査官が、出願された商標が登録されるべき要件を満たしているか否かの審査を行います。
(5) 拒絶理由通知
 登録の要件を満たさないものは拒絶の理由が通知されます。
(6) 意見書・補正書
 拒絶理由の通知書に対しては、意見書や補正書を提出することができます。
(7) 登録査定
 審査の結果、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合は、登録すべき旨の査定がされます。また、意見書や補正書によって拒絶理由が解消した場合にも登録査定となります。
 意見書や補正書をみても拒絶理由が解消されておらず、やはり登録できないと審査官が判断したときは、拒絶すべき旨の査定を行います。
(8) 拒絶査定
 意見書や補正書をみても拒絶理由が解消されておらず、やはり登録できないと審査官が判断したときは、拒絶すべき旨の査定を行います。
(9) 拒絶査定不服審判
 審査官の拒絶査定の判断に不服があるときは、拒絶査定不服の審判請求をすることができます。 拒絶査定不服審判の審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。審判官の合議体による決定を審決といいます。審理の結果、拒絶理由が解消したと判断される場合には登録審決を行い、拒絶理由が解消せず登録できないと判断される場合には、拒絶審決を行います。
(10)設定登録(登録料納付)
 登録査定がされた出願については、出願人が登録料を納めれば、商標登録原簿に登録され、商標権が発生します。  商標権の設定登録後、商標登録証書が出願人に送られます。
(11)商標公報発行
 設定登録され発生した商標権は、その内容が商標公報に掲載されます。
(12)登録異議申立て
 商標公報の発行日から2月間は、何人も特許庁長官に対して登録異議の申立てをすることができます。 登録異議申立てについての審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。審理の結果、異議申立て理由がないと判断された場合は、登録維持の決定を行い、異議申立て理由があると判断された場合には、取り消し決定が行われます。
(13)無効審判請求・取消審判請求
 商標権が設定登録された後でも無効理由がある場合、利害関係人は無効審判を請求することができます。また、登録後3年以上継続して使用しない場合、何人も取消審判を請求することができます。
無効審判請求・取消審判請求の審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。無効審判の審理の結果、無効理由がないと判断された場合は、登録維持の審決を行い、無効理由があると判断された場合には、登録無効の審決が行われます。取消審判を請求されると権利者は使用していることを証明することができない場合には登録取消の審決が行われ、商標権は取り消されます。
(14)知的財産高等裁判所
 拒絶査定不服審判の拒絶審決に対して不服がある出願人、商標無効審判の審決・取消審判の審決に対して不服がある当事者は、知的財産高等裁判所に出訴することができます。

上記の手続きの流れを図示すると以下のようになります。