- Q1
- 特許の対象となる「発明」とはどのようなものですか?
- Q2
- どのような「発明」であれば特許を受けることができるのですか?
- Q3
- 産業上利用できる発明に該当しないのはどのような発明ですか?
- Q4
- 新しい発明(新規性を有する発明)に該当しないのはどのような発明ですか?
- Q5
- 特許出願の前に自分で発明を発表した場合どうなるのですか?
- Q6
- 容易に創作できない発明(進歩性を有する発明)に該当しないのはどのような発明ですか?
- Q7
- 同じ発明について先に出願することには何の意味があるのですか?
- Q8
- 特許の出願書類はどのようなものですか?
- Q9
- 2015年7月3日に公布された「特許法等の一部を改正する法律」の主な改正点は何ですか?
- Q10
- 特許の出願から特許権を取得するまでの手続の流れについて教えてください。
- Q11
- 特許の出願内容は一般に公開されるものなのでしょうか?
- Q12
- 特許出願をしただけでは審査をしてもらえないのですか?
- Q13
- 審査によって特許要件を満たさないと判断された場合どうなるのですか?
- Q14
- 特許の有効期間はどれくらいですか?
- Q15
- 実用新案の対象となる「考案」は、「発明」とはどのように違うのですか?
- Q16
- 実用新案の場合も特許と同じように審査されるのですか?
- Q17
- 特許と実用新案のその他の違いを教えて下さい。
- Q18
- 実用新案の出願から権利を取得するまでの手続の流れについて教えてください。
Q1:特許の対象となる「発明」とはどのようなものですか?
「自然法則」とは、自然界において経験的に見出される科学的な法則をいいます。
従って、計算方法やゲームルールなどのように自然法則とは無関係の人為的な取り決め、催眠術を利用した広告方法のような心理法則、永久機関のように自然法則に反するものなどは、特許法上の「発明」には該当しません。
「技術」とは、一定の目的を達成するための具体的手段であって、実際に利用でき、知識として客観的に伝達できるものをいいます。
「思想」である以上技術そのものでなくても構いませんが、ある程度の具体性が要求されます。従って、フォークボールの投球方法等の個人の技能によるものや、絵画や彫刻などの美的創作物、機械の操作方法についてのマニュアル等の単なる情報の掲示は「技術的思想」に該当せず、特許法上の「発明」になりません。
「創作」とは、新しいことを創り出すことをいいます。したがって、天然物の単なる発見などは、特許法上の「発明」になりません。
Q2:どのような「発明」であれば特許を受けることができるのですか?
- 産業上利用することができるものであること(特許法第29条第1項柱書)
- 従来のものに比べて新しいこと、すなわち新規性を有すること(特許法第29条第1項)
- 従来のものから容易に創作できないこと、すなわち進歩性を有すること(特許法第29条第2項)
- 同じ発明について先に出願されたものであること、すなわち先願であること(特許法第39条、第29条の2)
- 出願明細書に不備がないこと(特許法第36条)
Q3:産業上利用できる発明に該当しないのはどのような発明ですか?
また、人間を手術、治療又は診断する方法の発明や、理論的には発明の実施が可能であってもその実施が実際上考えられない発明は、産業として実施できる発明ではないとされます。
Q4:新しい発明(新規性を有する発明)に該当しないのはどのような発明ですか?
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然と知られた発明
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然と実施をされた発明
- 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明や電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
例えば、特許出願した発明と同一の発明が、その出願前に学会で発表されたり、あるいは工場で実施されたり、あるいは文書やインターネットに開示されたりすることによって一般的に知れ渡っていれば、その発明は「新しい発明」ではないと判断され、特許を受けることができません。
Q5:特許出願の前に自分で発明を発表した場合どうなるのですか?
ただし、学会での発表、博覧会への出展等により、その新規性を失ったものについて、例外的に救済を受けられる場合があります。
この例外的な救済を受けるためには、特許法第30条に定められた所定の手続きが必要になります。
Q6:容易に創作できない発明(進歩性を有する発明)に該当しないのはどのような発明ですか?
つまり、すでに知られている発明を少し改良しただけの発明のように、誰でも容易にできる発明については、特許を受けることができません。
例えば、一般的に知られたナイフやハサミの機能を寄せ集めて作られた多機能付きナイフや、椅子の移動をスムーズにするキャスターを机に置き換えて、机の移動をスムーズにするキャスターにしたものなどは、誰でも容易に発明することができるので特許を受けることができません。
Q7:同じ発明について先に出願することには何の意味があるのですか?
同じ発明について、先に他人に出願されてしまうことを防止するために、発明を完成したらできるだけ早く特許庁に出願することが重要です。
Q8:特許の出願書類はどのようなものですか?
この中で特に重要な書類は「特許請求の範囲」と「明細書」です。これらは、出願から一定期間経過後に一般に公開されて”技術文書”の役割を果たすと同時に、個人の権利を公示する”権利書”の役割を果たします。また、特許庁における審査の対象として用いられます。
従って、明細書等は、具体的にどのような発明をしたのか当業者が実施できる程度に発明の内容を明らかにし、また、明瞭かつ簡潔に記載する必要があります(特許法第36条)。
特許出願は発明者自ら行うこともできますが、特許法や施行規則などの詳細な知識が必要になるため、弊所のような特許事務所に依頼するのが一般的です。
Q9:2015年7月3日に公布された「特許法等の一部を改正する法律」の主な改正点は何ですか?
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①特許法第35条:職務発明の活性化
- I職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属にすることを可能とする
- 発明者に対して現行法と実質的に同等のインセンティブを付与する
- 法人と発明者との間でのインセンティブ決定手続のガイドライン策定を法制化す
改正内容:
改正理由:
企業が組織として行う研究開発活動を我が国のイノベーションのエンジンとするためには、従業員の発明のインセンティブを明確化し、発明を奨励すること、及び企業が特許を円滑かつ確実に取得することで知財戦略を迅速・的確に行い、企業競争力の強化を図ることが重要である。
-
②特許法第107条第1項、商標法第40条第1項、国際出願法第18条第2項等:特許料等の改定
- 特許料を10%程度引き下げる
- 商標登録料を25%程度、更新登録料を20%程度引き下げる
- 国際出願の調査手数料等を日本語及び外国語別の料金体系に改正する
改正内容:
改正理由:
特許料等について、前回改正から5年以上が経過しているため料金の見直しを行った結果、利用者の負担を軽減し特許権・商標権の活用を促進するため料金の引下げを行うこととした。また、国際出願の件数拡大を踏まえ、料金の適正化を行うこととした。
Q10:特許の出願から特許権を取得するまでの手続の流れについて教えてください。
さらに、特許出願から3年以内に出願審査の請求をすると、その出願が特許の要件を満たすかどうかを審査官が個別に審査します(実体審査といいます)。
審査官による審査により特許の要件を満たすことが確認されれば特許査定がなされ、特許料の納付により特許権が成立します。特許の要件を満たしていないものは審査官により拒絶されます。
特許出願から特許取得までの基本的な流れは以下のとおりです。
Q11:特許の出願内容は一般に公開されるものなのでしょうか?
特許出願は、このような出願公開によって技術文献として世の中の技術の進展に寄与すると共に、それと同じ技術レベルの後の出願によっては特許を受けることができなくなります。
Q12:特許出願をしただけでは審査をしてもらえないのですか?
つまり、実体審査は出願審査の請求があった特許出願だけが審査の対象となります。出願人は、出願してから3年以内にじっくりと特許出願の価値を見極めてから、特許化に向けての審査を請求するか否か判断することができます。
Q13:審査によって特許要件を満たさないと判断された場合どうなるのですか?
出願人は、この拒絶理由通知に対して意見書を提出したり、あるいは補正書を提出して出願書類の記載を変更することができます。意見書や補正書によって拒絶理由が解消すると特許査定がなされます。反対に拒絶理由が解消しない場合、拒絶査定がなされます。
拒絶査定に納得できないときには、特許庁の上部機関への不服申し立て(拒絶査定不服審判)を行うことができ、そこでも拒絶査定が維持された場合は、さらに裁判所へ訴えることができます(知的財産高等裁判所へ提訴、さらには最高裁判所への上告)。
Q14:特許の有効期間はどれくらいですか?
特許の有効期間(存続期間)は、特許の出願日から20年となっています。権利発生から20年ではありませんのでご注意下さい。
Q15:実用新案の対象となる「考案」は、「発明」とはどのように違うのですか?
しかし、「発明」とは違って、「高度」なものであることは要求されていません。
また、実用新案法における保護の対象は「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」に限定されています。簡単に言えば「モノの形」などが保護の対象となります。特許法と違って「方法」や「物質」(モノ自体)は保護対象となりません。ユニークな実用新案の例としては、食品の形そのものなどがあります。
特許と実用新案は、対象とする技術レベルの差こそあれ、新規な技術の創作を保護するものであることに違いはありません。
Q16:実用新案の場合も特許と同じように審査されるのですか?
従って、特許の場合と異なり審査官による実体審査は行われません。実体審査が行われないので特許のような審査請求の制度はありません。また、無審査で比較的速やかに登録されるので出願公開制度もありません。
無審査で権利が付与される実用新案権を行使する場合には、実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければなりません(実用新案法第29条の2)。実用新案技術評価書は、実用新案権の有効性を判断する材料として、特許庁の審査官が、出願された考案の新規性、進歩性などに関する評価を行い、これを請求人に通知するものです(実用新案法第12条)。
Q17:特許と実用新案のその他の違いを教えて下さい。
また、特許を得るためには審査請求から平均して26ヶ月を要しますが、実用新案は(出願書類の不備がない場合)平均して出願から2~3ヶ月程度で権利を得ることができます。
なお、平成17年4月1日に施行された改正によって、実用新案権者は、明細書、請求の範囲または図面の訂正を一回に限り所定期間内に行うことができるようになり(実用新案法第14条の2)、また所定期間内に実用新案登録に基づいて特許出願することができるようになりました(特許法第46条の2)。
Q18:実用新案の出願から権利を取得するまでの手続の流れについて教えてください。
実用新案登録出願から実用新案取得までの基本的な流れは以下のとおりです。