【海外】《インドニュース》インド特許規則が改正
5月16日、インド特許庁は、インド特許規則の改正を公表し、同日付で新規則が施行されました。
インドでは、審査の遅延が深刻な問題となっており、遅い場合では審査請求から1回目のFER:First Examination Report(拒絶理由通知)が発行されるまで6年以上かかることもありました。そこで、インド国内でのイノベーションの活性化及び特許審査の効率化による審査滞貨の解消を目指して今回の改正が行われました。
新規則の概要は以下のとおりです。
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早期審査制度の導入:従来は、早期審査や特許審査ハイウェイ(PPH:Patent Prosecution Highway)のような審査を早期化させる制度は存在しませんでしたが、改正により早期審査制度が導入されました(規則24C)。
早期審査を受けるための要件
<要件A>
国際調査機関(ISA)としてインド特許庁が指定された、または、国際予備審査機関(IPEA)としてインド特許庁が選択された。
<要件B>
出願人がスタートアップ企業であること。
なお、スタートアップ企業であると認められるには、①設立から5年未満、②年間の売上高が2.5億ルピー(約4億円)以下、③技術革新や研究開発、技術や知的財産による新たな製品・サービスの商品化を行っている、の全ての要件を満たす必要がある。 -
アクセプタンス期間の短縮
アクセプタンスとは、FERから所定期間以内に、出願人に課された全ての条件を満たさない限り、特許出願は放棄したものとみなされる規定(特許法21条(1))です。
従来、アクセプタンスの期間は12ヶ月でしたが、改正によりアクセプタンス期間が6ヶ月に短縮されました(規則24B(5))。但し、FERから6ヶ月以内(アクセプタンス期間以内)に期間延長届を提出するとともに延長費用を支払うことにより、最大3カ月の延長が可能です(規則24B(6))。
なお、この規定は、2016年5月16日以降にFERが発行された出願に限られるため、2016年5月15日以前にFERが発行された出願のアクセプタンス期間は、従来通り12ヶ月です。 -
国内移行時に請求項を削除する補正が可能に
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国内移行時の補正は原則認められない
PCTルートの場合、インドへの国内移行と同時に自発補正を行うことは認められません。なお、国際段階で19条補正又は34条補正がなされている場合は、国際出願日の明細書、19条補正、34条補正のいずれかの内容で国内移行する必要があり、国内移行後でなければ自発補正を行うことができません。 -
国内移行時の請求項削除が可能
本特許規則改正により、国内移行時に請求項を削除する補正が認められました(規則20(1)Explanation)。
インドではクレーム数が10を超えるとクレーム超過費用が必要で、インド出願時のクレーム数でカウントされます。しかし、今回の規則改正によりインドへの国内移行と同時に不要な請求項を削除する補正を行うことで、クレーム超過費用を削減できるようになります。なお、請求項の削除以外を目的とする補正を国内移行時に行うことは認められません。
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国内移行時の補正は原則認められない
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クレーム及び要約書の記載内容の標準化
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クレームに参照符号を記載
図面に示されている特徴について、括弧を付して参照符号をクレームに記載すべきことが規定されました(規則13(4))。 -
要約書に技術的進歩を記載
要約書には、技術分野だけではなく、従来技術に対する発明の技術的進歩と、発明の主な用途を記載すべきことが規定されました(規則13(7))。
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クレームに参照符号を記載
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その他の規定
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委任状の提出期限
従来、委任状の提出期限は規定されていませんでしたが、規則改正により出願日から3ヶ月以内に提出すべきことが規定されました(規則135(1))。なお、出願日から3カ月経過後に提出する場合、特許庁費用及び嘆願書を提出する必要があります(規則137)。 -
審査請求費用の返還制度
審査請求後、FER発行前に特許出願を取下げた場合、審査請求費用の90%を返還する制度が新たに導入されました(規則7(4A))。これは、規則改正前の出願にも適用され、特許出願の取下げに関する庁費用も無料です。 -
分割出願の審査
分割出願の審査請求期限は、優先日から48ヶ月又は分割出願日から6ヶ月のいずれか遅い方でしたが(規則24B(1)(iv))、規則改正により、親出願が既に審査官に付託している場合、分割出願と同時に審査請求しなければならないことが規定されました(規則24B(2)(i))。なお、この場合、分割出願は分割出願日から1ヶ月以内に公開され、公開日から1ヶ月以内に分割出願は審査官に付託されます。
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委任状の提出期限