【国内】医薬品、成分が同一でも用法違えば特許権存続期間の延長可能
11月17日、最高裁(木内道祥裁判長)は、成分が同じ医薬品でも用法、用量を変更した場合、特許期間の延長が認められるかが争われた訴訟の上告審判決で、特許庁側の上告を棄却し、これにより特許期間の延長を認めた知財高裁判決が確定しました。
特許権の存続期間は、原則として出願日から20年ですが、医薬品は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」に基づき販売するには厚生労働省による承認を必要とするため、販売できない期間の不利益を回復する目的で、最大5年間の存続期間の延長が認められます。
本最高裁判決(平成26年(行ヒ)第356号)は、特許第3398382号の特許権者である米製薬大手ジェネンテックが、該特許権の存続期間の延長登録出願に対する拒絶審決の取消しを求めて提訴した訴訟の上告審です。本事案では、延長が認められた医薬品について、後に用法及び用量を変更して厚労省の承認を受け直した場合、別の医薬品として延長が認められるかが争点でした。
知財高裁判決によるとジェネンテックは、1992年に癌治療薬「アバスチン」に関する特許を出願し、2003年に登録されました。その後、2007年に国から「体重1㎏当たり5㎎または10㎎で投与間隔は2週間以上の用法、用量」で製造販売の承認を受け、この際に約4年の特許期間延長が認められました。
そして、2009年に「成分は同一であるが7.5㎎で投与間隔は3週間以上の用法、用量」で厚労省から追加承認を受けたため、ジェネンテックは、特許庁に改めて5年の延長を求めました。しかし、特許庁は「同一の薬で延長は認められない」として延長を認めませんでした。これに対し知財高裁は、2009年の追加承認によって異なる治療方法が可能になったため、延長を認めるべきであるとの判決を2014年5月に下しました。特許庁は、この知財高裁判決を不服として最高裁へ上告していました。
最高裁は、医薬品として実質的同一性に直接関わることとなる審査事項について、先に承認された医薬品と後から承認された医薬品とを比較した結果、後から承認された医薬品が先に承認された医薬品を包含しない場合は特許権の存続期間を延長することができると判示しました。
なお、最高裁は、「医薬品として実質的同一性に直接関わることとなる審査事項は、医薬品の成分、分量、用法、用量、効能及び効果である」としています。
特許庁は、現行の制度では同じ成分や効能の医薬品がある場合は特許期間の延長を認めていませんが、今回の最高裁判決を受けて、11月18日、「特許・実用新案審査基準 第Ⅸ部 特許権の存続期間の延長」の改訂を検討し、改訂審査基準を平成28年春頃を目処に公表すると発表しました。また、延長登録出願の審査の取扱いについて、先行医薬品類又は先行農薬についての処分が存在する延長登録出願の審査の着手は、原則として、改訂審査基準の公表後に行うとしています。