【国内】ハーグ協定の意匠出願にかかる、拒絶リスクの減少を目的としたガイダンスが公開

 8月10日、特許庁は、ハーグ協定を利用した意匠の国際出願時に拒絶のリスクを減少させることを意図して作成されたガイダンスが世界知的所有権機関(WIPO)により公開されたと公表しました。

 ハーグ協定の改正協定であるジュネーブ改正協定は、1999年7月に採択され、2003年12月に発効されたもので、この協定を利用することにより、ハーグ協定を締結している複数国に対して意匠登録出願を一括で行うことができます。また、複数国での意匠権を一元管理することも可能なため、出願人による意匠登録手続の簡素化と経費節減を図ることができます。日本は、2014年に国会で協定締結が承認され、2015年2月に加入書を寄託しており、これにより5月13日付でハーグ協定の改正協定であるジュネーブ改正協定が日本でも発効しています。

 特許庁は、ハーグ制度の管轄領域は、「審査官庁(ジュネーブ改正協定第1条(xvii):意匠の保護を求める出願について、少なくとも意匠が新規性の条件を満たしているかどうかを決定するために職権により審査する官庁)」にも拡大されてきており、ハーグ協定の1999年改正協定及び1960年改正協定に基づく共通規則第9規則(4)「締約国は、しかしながら、国際登録に含まれている複製物が意匠の開示に十分ではないことを理由として、国際登録の効果を拒絶することができる」の適用がより増加してきているとしています。また、「十分な意匠の開示」といった基準は、各管轄官庁により異なるため、国際出願をした際の意匠の複製物が、一の指定締約国の官庁では要件を満たしているが、他の指定締約国の官庁では要件を満たしていないという状況が起こり得ます。

 このような状況に鑑みて、WIPOにより上述のガイダンス「Guidance on Preparing and Providing Reproductions in Order to Forestall Possible Refusals on the Ground of Insufficient Disclosure of an Industrial Design by Examining Offices(審査官庁による意匠の開示が不十分なことを拒絶理由として指摘されることを未然に防ぐための複製物の作成方法に関するガイダンス)」が公開(http://www.wipo.int/export/sites/www/hague/en/how_to/pdf/guidance.pdf)されました。

 このガイダンスは、締約国、特に現在実体審査を行っている国、及び複数のユーザー団体との協議に基づき、共通規則第9規則を根拠とする拒絶のリスクを減少させることを意図して作成されたものです。なお、本ガイダンスは、絶対的又は網羅的なものとは見なされないため注意が必要です。